月夜に鎌を研ぐ。

だから今日は新月だって。
刀は武士の魂。ならば鎌は百姓の命。いやそれはちょっと言い過ぎ。鍬とか鋤とか、他にもいろいろ大事な道具はあるもん。とは言え、切れない鎌で草刈りをするのはムダな骨折り。だから鎌を研ごう。
こないだまでは京セラのセラミックシャープナーという砥石を使っていた。セラミックでできた棒状の砥石で、畑に持っていくのにも便利だし、研ぐのに水もいらないし、1本で荒研ぎと仕上げ研ぎの両方ができるから重宝していた。
しかし前の土曜日に畑の近所のTさんから、もっと優れたものがあることを教えてもらったのだった。その名も「ダイヤモンドシャープナー」。あら大変。ちょっと奥さん、ダイヤですってよ、ダイヤ。デーヤモンドだっぺ。だっぺはー。言うても人工やと思うけど。当たり前やがな。
さっそくホームセンターで購入。フォーエバーっちゅう埼玉の会社が作っているやつだった。「とぎくん」ってニックネーム(?)も付いている。「とぎくん」ねえ。ま、いいか。名前で研ぐわけじゃなし。今ちょっと調べてみたら、似たような商品がけっこう出てるのな。ヴィクトリノックスのもあるそうな。知らんかった。
さっそく、石に当たって大きな刃こぼれが2箇所できた私の草刈り鎌から研いでみる。刃こぼれを直すんなら荒砥石を使うほうが良さそうなんやけど、練習練習。水で濡らして、角度をセットして、開始。おーすげー。セラミックのよりずっと早い。それでも、Tさんは1回砥ぐだけで切れ味が戻るっていってたけど、刃こぼれを直すのはさすがに時間がかかる。
(しばらくたって)しかしさっきから包丁を砥ぐのと同じやりかたで研いでるんだけど、これでいいのかしらん。えー、なになに?

鎌は、包丁と違い手にとって鎌砥石で表を研ぎます

ガーン。それ知らんかっとってん(チントンシャン)。ま、いいか。切れるようになりゃなんでもええんじゃ。それに、私は草を刈るときに両手を同じように使うから、鎌も両面使うし。そのために両刃の鎌を探して買ったんだし。気にしない気にしない。いや、でもその研ぎかたもやってみるか。(作業続行)。
やってみると研ぐのもおもしろい作業だな。指先の微妙な感覚や音で、ちゃんと研げているかどうかわかる気がしてくる。
あっ、もうこんな時間か。刃物を研ぐという作業も中毒性があるみたいだ。そろそろいいか。指で触ってみる。うーん、鋭くなったような、まだまだのような……。試し斬り、いや試し切りをしてみるか。ティシュを切ってみる。うむ。よかろう。こんどはウエスがわりに使っている古靴下を切ってみる。うむ、切れるな。洗って、油を差して、おしまい。うーん、なかなかのできばえじゃわい。ややっ、なにやら妖しい光さえ帯びておるようじゃ。ううー、むしょうに何かを切りたくなってきたぞ。えーい、辻斬りじゃ、辻斬りに出るぞ。はっ、今オレは何を?こっ、これはひょっとして、持つものを人斬りに駆り立てるという、あの呪いの鎌なのか?はい、アホな遊びはこれくらいで。
私は指の腹を当てて、「うーん、切れるかなあ」なんていい加減にみていたけど、切れ味を調べる方法というのもちゃんとあるらしい。「刃物の研ぎ方 包丁、ナイフ選びの達人 : watanabeBlade.com 渡辺刃物製作所」。親指の爪で調べる方法。これは包丁だけど、鎌だって同じでいいんじゃないかな。やってみたら、ちゃんとひっかかった。よしよし。
数理設計研究所/自作アドバイス/砥石と刃物の研ぎ方」。そういや、刀を調べるときに、刃先を向こうに持って、刃の上から舐めるようにしてるのをみたような記憶がある。あのしぐさはこれだったのかな。これで調べてみると、まだ刃先が光るところが2箇所あった。ま、明日にしよう。それに、あんまり鋭く研ぎすぎると、刃こぼれしやすくなりそうなのも心配だし。
いやー今日も勉強になっちゃったな。そんなことも知らなかったのかとも言えるけど。じゃあ、今夜は鎌を抱いて寝床に入るとするか。そしたら寝入ったところを曲者に襲われても斬りつけられるからな。って、それはもうええっちゅうねん。