『ミミズと土』

チャールズ・ダーウィン『ミミズと土』平凡社ライブラリー、1994年6月、ISBN:4582760562Amazon.co.jp:ミミズと土 平凡社ライブラリー: 本)。
ミミズは偉い。ミミズの偉さに気づいたダーウィン先生も偉い。
私もあるときふと疑問に思ったことがある。「なぜ遺跡はいつでも土の中から発見されるんだろう?」。大阪や京都、奈良あたりでは、少し深く土を掘ると古い遺跡が出てくることはよくある。でも、洪水や火山の噴火を除けば、建物が目の前で土に埋まっていくところを見たことはない。ではいったいなぜ、古い遺跡は土の中に埋まっているのか?
私のまわりで訊いてみたところ、ある人が「チリやホコリのせいだ」と言った。「チリも積もれば山となるって言うでしょう」って。それは大変だ。掃除を怠っていると土の中に埋もれてしまうのか。この説はしばらくのあいだ私に掃除を熱心にやらせた。が、やがて省みられなくなった。だっていくらホコリをためても、埋まってはいかなかったから。もっとためないとダメなのかなぁ。
「うーん、やっぱり水とか風とかの働きかな」ぐらいに思って頭の中で眠らせていた疑問に答える人がいた。「ミミズだよ」。ダーウィン先生だった。やっとその論文を読んだ。それがこの『ミミズと土』。
実におもしろい。長期間にわたる観察と調査によって、ミミズの働き、その大きさを解き明かしている。第4章「古代の建造物の埋没に果たしたミミズの役割」は、まさに上に書いた疑問への答え。また、よくデザインされた実験によってミミズの持つ知能をも明らかにしている。
これだよ、これ。小さい頃、地を這う小さな生き物好きでは誰にも負けなかった私が知りたかったことは、こういうことだったんだ。いまの私のミミズとのつきあいといえば、畑を耕したり溝を掘ったりしていて、意図せずちょんぎってしまうこと、そして「ナムー」と唱えることぐらいだったが、改めてミミズへの愛着と感謝の気持ちが湧いてきた。
富貴のミョウガ畑では、両側の斜面から崩れ落ちてくる土は赤いのに、畑の土は黒い。これはミミズのおかげ。相棒母の畑を耕していても、黒い肥沃土の下にある赤い粘土の層が、ある種のチーズのように穴だらけになっていたりする。これもミミズのおかげ。来年は、せめてミミズの糞ぐらいは、それと見分けられるようになりたい。