『春秋の檻』

藤沢周平『春秋の檻 獄医立花登手控え1』講談社文庫 1982年5月15日 ISBN:4061317636堺市立中央図書館蔵 フシサ)
若くして牢医者となった主人公 立花登。相役の矢作幸伯とちがい、登には、「定められたことだけをやり、囚人によけいな情をかけたりはしない」ということができない。そのせいでいろいろな事件に巻き込まれていくけれど、それを切り抜けていくだけの頭と行動力と、いざというときの柔術を登は持っている。ついでに、どうも女性にももてるらしい。
ということで、ふつうの人間からしたらスーパー・マンに近い存在だけど、居候同様に起居している叔父の家では、叔母や従姉妹から下男のように扱われていたりして、主人公としてなかなかうまい人物設定だと思う。続きが楽しみ。
ここからはトリビア。「雨上がり」の章で、登がうしろから襲われ首をしめられるシーン。登は<尺沢>のツボをとらえて窮地を脱するけれど、ここは<少海>を取るほうが適当ではないかと思った。
うしろから襲って首をしめる場合、ふつうは前腕を首に巻きつけるようにするのではないだろうか。そういう体勢になったとすると、肘関節前面で上腕二頭筋腱の橈側にある尺沢は、上腕二頭筋と前腕の屈筋群に埋まってしまって取りづらくはないか。ならば尺沢よりも、上腕骨内側上顆からすぐ外側(橈側)にあり、筋肉に覆われない少海のほうが取りやすいと思う。押さえたときの効果も尺沢に劣らない。尺沢ほど上腕二頭筋を麻痺させることはできないけど、押さえられたときの痛みの強さでは尺沢にまさるし、前腕の屈筋群を麻痺させる効きめもある。
と思って、自分の腕で首を絞めながら確かめてみたけど、力いっぱい腕を巻きつけてしまうと、どっちのツボも取れないや。少海も前腕の筋肉で覆われてしまうことがわかった。こういうときは、上腕の中央あたりで?白とか青霊あたりのツボを取るほうが実戦的なのかもしれない。よくわからないけど。詳しい人がいたら教えてほしい。教えてください。