餅撒き。

先週Tさんから「来なさい」って教えてもらった富貴の餅撒き。野迫川村の帰りに寄る。
しかし、きのこ祭が終わったとたんに雨が止んでしまうとは皮肉。ところで餅撒きとはいったい何をするものなのか。私は知らない。まあ、お餅をどこかから撒くことは間違いないだろうけど、いったいどこから?家の屋根の上から?山の上から?そしてどんなお餅を撒くのか?まさか鏡餅ではないだろうな。そんなん当たり所が悪かったら死ぬぞ。で、誰が撒くの?
地蔵堂の近くに着いたら、既にたくさん車が止まって、今までにここで見たことがないほど多勢の人が集まっている。稲の脱穀のときに会ったおばちゃんに「ああ、大阪から来はった人やな。野迫川から回って来たんかい。間に合うた、間に合うた。よかったな」って声を掛けられる。おばちゃん、なんでそこまで知ってんの?気にかけてもらってたと思うと、嫌な気はしないけど。
見上げると、裏山の中腹にある地蔵堂の前で10人くらいの人が集まって何かをしている。宗教行事のようでもあるし、ただ集まってお茶でも飲みながら雑談をしているようにも見える。ともあれ、あれが終わらないと餅撒きは始まらないようだ。
下の道路で待っている人たちはみんなニコニコ笑っている。興奮気味で、会話のテンションがなんだか高い。こっちまでだんだんワクワクしてきた。
地蔵堂から人が降りてきて、軽トラが3台出てきて道の脇に止まった。荷台から木の板を下ろし、道路を横切る溝に蓋をする。白いゴミ袋に入っているのが今日の獲物らしい。「みんなこっちに集まれ」って、軽トラの横に集められる。50人以上いただろうか、その大部分が中高年の女性。あとはもう少し若い女性と子ども。男性はほんの少し。おばちゃんたちはケラケラ笑って、もう待ちきれない様子。こっちは、「いつ始まるんだ。何が始まるんだ」とソワソワ(いや、餅撒きに決まってるけど)。みんな道にしゃがみこんじゃった。私と相棒も同じようにしゃがみこむ。と、軽トラの上から、餅やら、袋に入ったスナック菓子やらパンやらが突然ばらまかれた。降るわ降るわ、雨のように次々と白い餅が降ってくる。拾うほうは道に落ちたブツをかき集める。下を向いて拾っている間にもまた次の餅が降ってくる。周りの人に取られまいとみんな必死だが、取り合いをしている暇はない。他人のを取っている間にも餅は飛んでくるから。ちょっと間が空いたら立ち上がって、遠くにちらばって誰にも拾われていない餅にも手を伸ばす。
どれだけのあいだ続いただろう。すごく長いように感じられたけど、じっさいにはほんの数分だったと思う。始まったときと同じように、唐突にそれは終わった。
なんやこれー。おもろいやないか。一息ついて、拾い集めたのを見ると、ほとんどは丸い小餅だった。鏡餅の下ぐらいの大きさのが1つ。アンパンも1つあった。相棒と合わせると、大きいサイズのレジ袋に半分以上集まった。初参加にしては上出来なんじゃないか。
ほかの人は?と見ると、もっと拾っている人もいるし、少ない人もいる。ちょうど良かったかな。よそもんがいきなりいちばんたくさん拾ったりしたら、ちょっと具合が悪いかもしれないからな。
まわりでは、自分がどれだけ拾ったか、めいめい成果を見せ合って、どんな風に拾ったか大声で話をしながらゲラゲラ笑っている。餅の粉を浴びて、頭から真っ白になっているおばさんもいる。だんだんと帰路に付く頃になってもみんな興奮が冷めない様子。車に乗り込んだり、歩き出したりしてもまだ笑っている。
しかしこんなイベント初めてや。高野山のあたりではあちこちで行なわれているらしい。野迫川村でもあるらしい。なんやろ、これ。ちょっとした蕩尽であることは確か。そりゃ楽しいって。