ムラサキケマン。

富貴のミョウガ畑の脇に咲いていた。
ケシ科ケマン属。葉や花に特徴があってわかりやすくおもしろい。花は人気があるようで、ウェブ上にたくさん写真がある。http://images.google.com/images?q=%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%82%B1%E3%83%9E%E3%83%B3&hl=en&lr=&start=20&sa=N

  • 一年草
  • 秋に芽生え、春に紫色の花を咲かせる。
  • 花の色は、薄いものから濃いものまでいろいろあるよう。
  • 全体が柔らかい。(切って持って帰ったらクニャクニャになった。水に浸けておいたらちょっとシャキッとした)。
  • 葉は根もとに多く、長い柄を持つ。細かく裂け、縁に深い鋸歯がある。
  • (私が採ってきたものは、葉の縁も紫がかっているように見えるけど、そういう記述はどの資料にも見当たらない)。

ケシ科で有毒といったら期待するなというほうが無理な話だけど、そうではない。『ようこそ!蓮見さんちです』の「裏庭」(毒『む』)によると、プロトピンやサングイナリン、テトラハイドロコリサミン、コリサミンというものが成分らしい。こういう方面に暗い私にはそれぞれどんなブツなのかはさっぱりわからないけど。
毒は全草に含まれ、「涙とだ液の分泌がふえ、心筋運動に障害があらわれて痙攣を起こす」(上サイト)と書かれている。手元の『ミニ雑草図鑑』(廣田伸七 ISBN:4881370626)には「嘔吐、昏睡などの症状を起こす」と。また「嘔吐、下痢」と書いてあるウェブページも見かけた。でも死ぬことはないらしい。
プロトピンには軽い鎮痛、鎮痙作用があるそうで、これが薬草としても使われた理由か。薬草として利用するための処理法などはまだわからない。宿題。

ムラサキケマンの花は独特の形をしている。これには理由というか機能があるそうだ。『福原のページ(植物形態学・分類学など)』の「植物形態学」「6-5. 動物媒花:選別と制御」に詳しい。
まず筒状の花の奥まったところにある蜜腺。これによって蜜を吸う昆虫を限定しているそうだ。(具体的には、長いくちばしと花に潜り込む力や器用を兼ね備えたハナバチなど)。
4枚の花びらのうち外側の2枚が花筒を作る。外側の2枚のうち、上になった花びらの基部がふくれて飛び出して距になり、蜜をためる。下になった花びらは唇状に開く。内側の2枚は先が閉じていて、その中に雄しべと雌しべが入っていて、雄しべ・雌しべはふだん外から見えない。

内側の花びらには平たいとさかのような部分があり、そこは細胞の表面がふくれているせいででこぼこしている。ハナバチはとさかに足を掛けて距にくちばしを差し込み蜜を吸う。このときに内側の花びらがハナバチの体重で押し下げられて葯と柱頭が露出し、ハナバチの腹に触れる。

じつによくできている。いったい誰がなんのためにこんなふうにつくったんだろう。

種をまく方法もおもしろい。果実がみずから勢いよく裂けて、種を弾き飛ばすのだそうだ。(同上サイト「8-2. 非動物散布 8-2-2. 自動散布」)。カラスノエンドウと同じだな。裂けた後のさやがくるくる巻いているようすもおもしろそう。
さらに念の入ったことに、種子には小さな食用組織が付いていて、地上に落ちたあとアリに運んでもらうそうだ。(同上サイト「8-3. 動物散布 8-3-3. 動物被食散布の変型: アリ散布[myrmecochory]と貯食型散布」 )
ということで、この草は刈り取らないで観察することにする。名前の由来はよくわからないので、これも宿題。