『寄生虫はつらいよ』

藤田紘一郎寄生虫はつらいよ』PHP研究所、2002年3月29日、ISBN:4569620922堺市立中央図書館蔵498/04フ)
寄生虫がアレルギーを抑えるという学説を自ら実証するために、著者がサナダ虫をおなかに飼っていることはきいたことがあったが、「キヨミちゃん」という名前が付いているとは知らなかった。
寄生虫ならなんでもいいわけではなくて、著者が飼っているのは体に悪さをしない日本海裂頭条虫という種類のものだということも初めて知った。キヨミちゃんは1日に20センチも成長して、100万個以上の卵を生む。そしてアレルギーを抑える物質を日々出してくれるんだって。そういう生き物を自分のおなかに飼っているのって、ちょっとすごくない?
でもキヨミちゃんを飼うのは簡単じゃない。キヨミちゃんの卵が川で孵化してケンミジンコの体に入らないと、幼虫にまで発育しない。さらにそのケンミジンコがサケやサクラマスに食べられて、やっと感染型の幼虫に育つ。なかなか大変。簡単には感染できないらしい。
さらに、著者が「花粉症を抑える分子量約2万の物質」を寄生虫から取り出すことに成功し、薬にしたというのにも驚いた。ただしこの薬、免疫のバランスを崩してしまい、がんになりやすい体質にしてしまうため実用化できなかったそうだ。寄生虫が感染したばあいは、上の物質以外にもいろいろな物質を放出して、ヒトがアレルギーにもがんもにならないようにうまくやっているんだって。感心。
あとはだいたい、既に知っていたことや同じ考えかたのことが多かった。ただしアレルギーの増加についてはたぶん他にも原因があると思う。
初出は東スポに連載のエッセイ。ダジャレ満載で楽しく読めた。ダジャレは私も大好き。