明治40年の植物図鑑ブーム。

俵浩三『牧野植物図鑑の謎』平凡社新書 1999 ISBN:4582850170

明治37年から導入された、小学校の国定教科書には理科の教科書がなかった。
文部省は、理科の国定教科書を作らなかっただけでなく、教科書を使うなと言ったのだ。
なぜか。
当時、理科は自然を観察・実験する科目だとしていた。
だから子供の身近にある自然こそが教科書であって、全国一律の教科書は作れなかった。
教師は、郷土の自然について、特に植物についての知識が必要になった。
その教師のためのガイドブックとして教育・普及型の植物図鑑が求められた。
明治40年前後の植物図鑑出版ブームの背景の1つにこういう事情があったということだ。
この「理科は身近な自然が教科書」って、ずいぶんまともな考え方に思える。