『カルマ落とし』

山中麻弓『カルマ落とし』角川書店、2002年3月、ISBN:4048733427
あまりピンと来なかった。『猫談』ではあんなにワイルドだった著者にこんな小説を書かせるなんて,都会はおそろしいところや。
神経症的。過剰な意味付けと単純化。読んでいてくたびれた。人間関係を巡る思考が多い。そういうのはいくら考えても正解がない。正解を手にしたと思っても、いつでも手遅れ。だから前へ進んでいるようでいて、どこにもたどりつけない。同一平面をぐるぐる回り、ひたすら疲労だけが溜まっていく。
こういうのに私は向いていないようだ。体質的にこういう風にはなれなくて、どうもピンと来ない。ここで描かれている福生という町にも、「住んでいるとどんどん疲れていきそう」という感想しか持たなかった。梅の木に「ももちゃん」と名前を付けて話しかけるところはおもしろかった。そういうのをもっと読めるかと期待していたんだけど。都市生活に疲れた人が読めば得るところはあるかも。