桃。

山梨県に住む友人から今年も桃が届いた。ほんのり赤みをおびた白桃。ずっしりとした大玉。川中島白桃という品種。今年はちょうど大事な時期にカンカン照りが続いて、作柄も良好らしい。
届いた日にもう、「今を逃してはならない」ってぐらいの食べ頃になっていた。今までに食べたことのある人間たちは味を覚えているらしく、盆休みでたまたま家に来ると、めざとく持って行ってしまった。
なくならないうちに私も1つ。過去いろいろ食べ方は試してみたけど、けっきょく皮ごとまるかじりするのがいちばんおいしい。氷水に漬けて30分ほど冷やし、軽くこすってうぶ毛を落とし、準備完了。自分も上半身裸になって、台所の流しの前に立ち、いざスタート。
下の部分、お尻の割れたところからひと口かぶりつく。聞くところによると、ここがいちばん甘くないらしい。いや、それでもじゅうぶん甘いけど。こぼれ落ちそうになる果汁を一滴もムダにすまいと、顔を突き出して、じゅるじゅると口ですすり、さらにかぶりつく。顔も手もあっという間にベタベタになってしまうが、そんなことは気にしない。このさい見た目なんかかまっちゃいられない。種に届くまでさらに中に向かってかじり、さらに割れてないお尻のほうへ。そしてじょじょに頭のほうへ。がぶり、じゅるじゅる、がぶがぶ、じゅるじゅる。食べ進むに連れて甘さが増し(そうなるように食べている)、信じられないぐらいのその甘さをじっくり味わいたいのに、のんびりしているとどんどん汁が流れ落ちてしまうから、自然とペースが速くなる。あっという間に食べ終えてしまうと、お腹がいっぱいになっていた。「明日のお昼ごはんは桃」ってしたくなるぐらい満腹感がある。
寝ている間にアリにたかられない程度に、顔と手をささっと洗い、手に残った香りを嗅いで、余韻に浸る。ああ、幸せ。