セレッソvs千葉(生観戦)。

ということで、レアル・ソシエダの監督として4シーズン目。3シーズン連続でリーガ優勝、2シーズン連続欧州チャンピオン、コナミカップトヨタカップ)1回制覇のshryk監督(ゲームの中での話)の視点からJリーグを観てきました。
感想:キリンの一番絞りがおいしくなった。
いや、まじめな話、一番絞りって、ホップを増やしたか改良したか、ずいぶん香りが豊かになってました。「こんなビールになったんや」ってちょっと感心しました。なかなかいいと思います。って、まだビールの話かい。
と、そんなふざけた感想が最初に来るのは、スタジアムの雰囲気がだれていたせいにしたい。タダのお客さんが多すぎるよ。水曜夜でこのカードなら、5千人がいいとこ。それが1万飛んで751人って。タダ券配りすぎでしょ。いくら配ったって定着しませんから、この人たち。だって見てないもん、試合を。飲んで食ってだべってるだけ。せっかくハイ・クオリティーなサッカーを(一方的にだけど)ピッチ上で展開してくれてるのに。こんな人たちに来てもらっても何にもならないよ。しかも観客を整理・誘導する人員は5000人の時と同じだし。運営いい加減すぎ。はい、愚痴はここまで。
セレッソ 2-0 千葉(J's GOAL

「いいサッカーをしたほうが勝つとは限らない」という見本のような試合。「そうそういつまでも外してくれるとは思わないほうがいい」なんて試合中に言ってたけど、最後まで外してくれたね。
千葉はなんだか元気がなかったな。今シーズンは因縁の磐田戦をテレビで観ただけだから、死力を尽くして戦ったと言ってもいいあの試合と比べてしまうと気迫を感じないのは当たり前かもしれない。でもなんだか淡白だった。疲れてるのかな?大阪の熱さにやられたか?今日は大阪にしては涼しかったけど。千葉とFC東京がもうちょっと上にいないと、Jリーグがつまらない。頑張ってほしい。
ただし今日の千葉が負けたのは運がなかったからじゃない。確かにゲームを支配して、セレッソの弱点を突いて、ポジション交換も繰り返して、チャンスはたくさん作った。でもゴールに近付いてきたところでプレイの質が低い。パスミス、トラップミス、シュートミスの大盛り。これは監督にはどうすることもできない。監督の仕事は、シュートが入る確率が低いのなら、たくさんシュートを打てるようにするところまで。そこはちゃんとできていた。あとは選手の問題。オシムは言わないだろうけど、単にヘタ。補強にもうちょっとカネを使わないと、いま以上の成績は得られないと思う。(まあでも、これだけシュートを外したら、次の試合はきっと入るよ。あ、だからやっぱり運なのか)。
その点、セレッソのほうは、個々の選手の球際のうまさがめだった。特にブルーノ・クアドロスファビーニョ、西澤の3人。対人場面での駆け引きと体の使いかたがうまくて、1対1で勝っていた。攻められても崩されてもチーム全体が落ち着きを失わなかったのは、こういう選手のおかげ。だから個々の力で勝ったと言えるだろう。深読みすれば、千葉に執念を感じなかった理由はそこにあるのかもしれない。「あんなサッカーに負けるなんてな。でも向こうはうまいヤツがいるからな」って。まぁ、妄想だ。
システムはセレッソが3-4-1-2。ディフェンシブ・ミッドフィルダーを2人横並びに置き、両アウトサイドはウイングバックが受け持つ。このシステムで点を取るには、大きく分けて2つの方法がある。1つは前の3人だけで点を取るやりかた。今シーズンのガンバはこれ。前の3人の能力とコンビネーションが高くないと無理。前の配置がツートップ&1トップ下の「1-2」でも、ワントップ&ツーシャドーの「2-1」でも同じ。もう1つは、高い位置からプレスをかけて、相手ゴールに近いところでボールを奪ってどさくさまぎれに点を取る、確変頼みのワーワーサッカートゥルシエ・ジャポンはこれだった。他にDHが上がるとか、WBが上がるとか、オプションはいろいろあるけど、基本的には中央のゴール前危ないところ(バイタル・エリアですか?)を3-2の5人で固める守備的なシステム。どうしても攻撃が薄くなるのは避けられない。
セレッソはどうやって点を取ろうとしたか。上のどれでもない。ラインが低いから後者のやりかたではない。と言って前の3人だけで点を取ろうとしていたとも見えない。西澤、森島、黒部の3人は、能力はともかく、長い準備期間があったとは思えないほどコンビネーションがなかった。後半、下村が森島に「トップが下がってきたら、入れ代わりに上がれ」って身振りで指示していたが、そんな基本的な動きも練習でやってこなかったのか。
その中で、点を取るためにどういう作戦を採っていたかをあえて探すなら、左WBのゼ・カルロスが上がりっぱなしになることを許していたことぐらいか。左のCBにスピードのある柳本を置いて、カバーリングをさせるのはその一環かも。(とすると、終盤その柳本に代えて、高さはあるが足の遅い鶴見を入れた理由がわからなくなるが)。ところがゼ・カルロスがクロスを入れても、中で誰も反応しない。無人のニア・ポストにボールが入る場面が何度繰り返されたか。このへんもコンビネーションがない。ブルーノ・クアドロスファビーニョがボールを奪ってそのまま上がっていく場面もあったが、まわりがそれに合わせて動かないから、すぐに手詰まりになる。全体的にボールを持ってから攻めかたを考える選手が多くて、攻撃にスピード感がなく、「前が空いているから上がろうか」「詰まったから下げようか」というような行き当たりばったり感が漂う。チームとしてどうやって点を取るかが見えてこない。
いっぽう千葉は3-3-2-2ないし3-1-4-2が基本システムか。守備時はコンパクトなエリアを3-5-2の3列で守る。いったんマークを捕まえて守備陣形を整えると、そのままマークについていく(マンマーク)。アウトサイドをWBが1人で担当するのはセレッソと同じだが、センターはより攻撃的な布陣。DHは佐藤勇人1人で、その前に羽生とポペスクの2人。3バックを攻めるときの定石通り、3枚のCBの外側のエリアを狙う。特にセレッソから見て左サイド、ゼ・カルロスの背後、柳本の外のスペースを、ポペスクと坂本が連携して突いていた。攻めに入ったら上がる上がる。個々の選手が長い距離を走って、めまぐるしくポジションを交換する。
佐藤勇人が上がって空いたスペースに、CBの斉藤(かつてセレッソに在籍)が上がっていった場面まであった。単にカウンターを喰らったときのためにスペースを埋めておくんじゃなくて、本物のボランチのようなプレイをしようとして、しばらくはそこそこやっていた。ぜんぜんそんなタイプじゃないのに(つまり簡単に言うとヘタ)。このシーンは長く記憶に残りそう。ただし本来ならそこに上がるのは阿部のはず。全盛期の岡山(前名古屋、現新潟)でも滅多にやらないような宇宙開発をやらかしたし、阿部のコンディションはそうとう悪いのかもしらん。
というように、試合は圧倒的な千葉ペース。後半セレッソもマークを修正したり(でも千葉にちょっと動かれるとズレズレで、ゴール前にどフリーな選手が続出していた)、パス&ゴーの動きが出たりはしたが、途中までは完全に千葉の勝ち。が、結果は2-0でセレッソの勝ち。決めるところで決めないという必然性はあるにせよ、千葉には気の毒だった。
セレッソは、そろそろ次の監督を探したほうがいい。モラルとフィジカルを建て直して降格を回避したのは小林監督の手柄。それは評価されるべき。でもそれ以上のものはなさそう。この面子で、ふつうのチーム状態で、助っ人がまともならこのくらいの成績は当然とも言える。
千葉は、攻撃的で明快なスタイルと類稀なキャラクター(オシム)を持っている今こそ強くなって欲しい。集客に力を入れて、経営状態を改善して、補強にもうちょっとお金を使って欲しい。千葉みたいなチームが強くならないと日本のサッカーが進歩しないから。
最後に個々の選手評。セレッソは大熊監督にお中元を贈らないとな。まだまだ課題はあるにせよ、苔口がずいぶん良くなった。今まではただ前に走るだけだったのに、プレイの幅が出てきて、その活かしかたも少しずつわかってきたようだ。スピードという絶対的な武器があるだけに、育てようによっては大化けすることも期待できる。
黒部。本人は代表という目標を持っているようだけど、無理だわ。みんなが黒部に点を取らせるように働いて、お膳立てをして、やっと点を取れる選手。(今日やっとわかった)。そこまでしてもらっても点を取れないFWもいるから、ゴールへの嗅覚や決定力に対してそれなりの評価はしていい。でも代表に入ったら、みんなそこまでやってくれない。単体でどれだけのことができるか。それが、個々の力で劣り、どうしても守備に追われる日本代表でFWを張ろうとするなら要求されること。例えば西澤に比べても、ゴール以外の部分でチームにどこまで貢献できるかって部分でかなり見劣りする。(とりあえず邪魔はしてないけど、「なんかせえよ」って。そんなヤジも飛ばしました、私。すみません)。よくわからない退場処分になった西澤が出られない次の試合で何をできるか。それが見物。