『糖尿病とたたかう』

二宮陸雄、高崎千穂『糖尿病とたたかう』KKベストセラーズ、ベスト新書81、2005年2月1日、ISBN:4584120811堺市立中央図書館蔵 493/12ニ/M)。
糖尿病性網膜症の問題。高血糖が長期間続いていてすでに網膜症がある場合、急に血糖値を下げるとかえって悪くなることがあり、失明にもつながりうるということ。これは知らなかった。
もう1つ。経口血糖降下剤による重症の低血糖事故が日本でかつていくつもあった。このことも初めて知った。
私が見聞きしてきた経験では、インスリン療法が必要な状態の人でも、インスリンは怖がり、経口血糖降下剤を好む傾向がある。経口血糖降下剤で低血糖を起こしたことのある人でさえ、そう。私にはよく理解できないけど、低血糖を起こす確率の違いより、注射か飲み薬かという違いのほうが大きいのだろうか。
大阪にいると、糖尿病を持つ人がものすごく多いことにたびたび驚かされる。この多さ、そしてまだまだ増え続けていること。これはほんとうにただごとではない。しかも、糖尿病を持っている人のうち、正しい知識を持って適切なコントロールをしている人はほんのごく一部でしかない。ほとんどの人は、糖尿病をちゃんと理解しないまま、自己流の治療をやったり、テレビで「これがいい」って言ってたというものを次々と試しながら、いっこうにコントロールがつかずに、ゆっくりと、でも着実に悪化させていっている。
糖尿病(特に2型)に関しては、「これさえあれば大丈夫」なんて魔法の薬はないし、そんな食べ物もサプリメントも民間薬もない。でも、金儲けのためにそういうものがあるかのような幻想を振りまく人たちもいて、私はいちいち腹を立てる。
専門的な知識・技術を持っていて、患者さんの体のこともよく知っていて、患者さんのための助言をするお医者さんの言うことより、テレビの言うことを信じたがる患者さん自身も問題かもしれない。でも自分の利益のためにいい加減なことを言う人のほうがはるかに悪い。(患者さんに幻想を真実だと思い込ませる手口と、いざとなったときの言い逃れの手口との両方が見えるからよけいに腹が立つ)。
こういう本ができるだけたくさんの人に読まれて、糖尿病についての正しい知識が広まることを切に願っている。