あたえ、あたえられ。

祖母いわく「イヌがおらんようになって、楽になるやろ」。
もともと生き物が好きじゃない人はこういう風に考えるんだなぁ。
確かに、ハナが痴呆になってから、それまでよりもずっと多くのエネルギーと時間を、ハナのために割いてきた。
でも、世話するのが嫌だとか、つらいと思うことはなかった。
メインの世話役ではなかったにせよ、ウンチまみれ事件とか、大変なことはそれなりにあった。
それでも、世話をすることでこちらが与えられたものがたくさんあったから。

「ハーナー!」と耳元で呼びかけると、「ハテ?わてがハナでしたかな」とでも言いたそうな顔をして、ほとんど見えなくなっていた目をパチクリさせ、ほとんど聞こえなくなっていた耳をそばだてた。
オムツが必要になってからは、おしっこやウンチが出るたびに鳴いて知らせた。
「出たよー!換えてー!」と言っているように聞こえた。
いろんな機能を失っていったにもかかわらず、人間への信頼は最後まで失わなかった。
ちょっと人間不信のところがある私は心をうたれた。
とっても大きなことを教えてもらった気がする。
いい加減に投げ出していたら、きっと重いものを背負ってしまっただろう。
ちゃんと世話して良かった。