外で体を動かすのは楽しい。

富貴へ。
ミョウガ畑の手入れ。今日は溝掘り。

この畑は、小さな山にはさまれた狭い谷間にあり、小川が流れている。
水が不足する心配はあまりないけれど、水路を整備し続けないと、水浸しになってしまう。

近所のT垣内さんの話によると、明治の頃に、いちばん上の段に小さなため池を作ったらしい。
その後、ここで米を作っていた人が、下から見て右手の、山との境界に深い水路を作った。
それ以来、斜面から滑り落ちた土砂で水路がしだいに埋まっていったという。
水路が埋まって行き場を失った水は、伏流水となって下の段で湧き出し、あちこちで水溜りを作って、畑を水浸しにしてしまう。
かなり水浸しでもミョウガは生えるそうだが、こういう環境により適しているらしい他の植物にしだいに侵略されつつある。
年々ミョウガの生えている面積が減り、今年はミゾソバにさらに攻め込まれた。
そこで所有者のF家さんちのアマチュア雑草研究家Tケシくんたちと相談して、水路を直して、水はけを良くしようということになったのだ。

今日の作業はいちばん下の段で水路を掘りなおすことと、その水路に垂直に交わる溝を掘ること。
この段の水の通り道を作って、水はけを良くすることが狙い。

雨が2日ほど続いたあとで土は柔らかいが、道具はほとんどスコップだけの手作業で、しかもひ弱な素人が3人。
溝を埋めているのは斜面から崩れ落ちた土砂だけではなく、上流から運ばれてきた石もある。
ススキはしっかり根を張っているし、シシウドは太い根を地中深くもぐりこませている。
ぬかるみになっているところには、セリがびっしりと生え、スコップの先が土になかなか届かない。
けっきょく子どもの砂場あそびに毛が生えた程度の溝しか掘れなかったが、それでも水は勢い良く流れるようになった。

一雨降れば溝は埋まってしまうかもしれないけど、それでもいいのだ。
「たとえ一文の特にもならなくても、外で体を動かして働くのは楽しい」。
宇江敏勝さんにそういう文章があったと思うけど(不正確なのは許して)、まさにそういう気分だから。
外で体を動かすと、ゴハンはおいしいし、ビールもうまい。
T垣内のおじさんがしてくれたいろんな話もおもしろかった。
春にTケシくんが2、3株を置いておいたらしっかり根付いて増えているクレソンをお土産に採って帰る。