『山に棲むなり』

「あなたは海派?それとも山派?」という質問がある。(別に答えなくてもいい類の質問)。
昔の私は間違いなく海派だった。
神奈川・茨城と合わせて約5年間海のそばに住んだ。
特に茨城では、国道をはさんで海まで100メートルぐらいの近さだった。
自転車を毎日磨かないとスポークがすぐに錆びてくるほどの近さだった。
マウンテンバイクに乗り始めてから、ランニングでも山に行く(トレイル・ラン)ようになったけど、そのころはただ走りすぎるだけで、働いたり遊んだりする場だとは思っていなかった。

いまはむしろ山派かな。
海が遠くなったせいもある。(いちおう<海>と呼ばれるものは市内にもあるけど、あんなの海じゃない)。
少しずつ山のおもしろさがわかってくるにつれ、機会があるかぎり山に入りたくなってきた。

で、宇江敏勝『山に棲むなり 山村生活譜』新宿書房、2001年9月20日ISBN:488008235X

著者は熊野の山村で育ち、林業をなりわいとしながら、文学を学んだ。
この本に描かれているのは山の生活そのもの。
際立った技巧があるわけではない。
でもそれがいい。
描かれている世界がとても魅力的だから。
山や川や草木や動物、人々。

できることならこういう暮らしをしたいと強く思う。
山のことに関しては赤ん坊同然の知恵や知識しかないところから、40前のこの年で出発することが可能なら。
スポーツはいろいろやってきたものの、山育ちの人とは体のできがしょせん違う、こんな体でついていけるなら。