『フランス香水の旅』

松井 孝司『フランス香水の旅 香りを作る男たち』1993、日本放送出版協会ISBN:4140801050)。
フランス語の日本語表記に不自然さを感じるところはある。
内容はとても面白い。
ジャンポール・ゲランとエドモン・ルドニツカ。
この2人のインタビューだけでも読む価値がある。
加藤和彦(作曲家)・安井かずみ(作詞家)夫妻が聞き手になっていることも幸いして、芸術家としての創香師(この本では<調香師>と言わず<創香師>と言う)を率直に語っている。
2人ともマーケティング主導の香水作りには反対。
ルドニツカ氏曰く、

香水を差し出すと、それが好きか嫌いかは言えますが、どんな香水を作ってほしいかは、言えないでしょう。客は、自分がどんな香りを望んでいるかは分からないのです。したがって、香水にマーケティングはあり得ません。
今日作られている香水の多くは、商業的成功をおさめたもののコピーであり、ただの混ぜものなのです。科学技術の分野では、著しい進歩をしていますが、嗜好、趣味の分野では、雑音、暴力、容易さ等に支配されて、まったく退廃期に陥っているのです。

この分野にも、出版や音楽の業界と同じ傾向があるようだ。
確かに、10年あるいは60年以上愛され続ける名香と呼ばれる香水は、マーケティングによっては生み出されないだろう。
ほとんどの香水は売り出されてから3年以内に消えて行く。
どうせ長くは売れないものだから、その間にできるだけたくさん売ろうというのがマーケティングなら、それは香水そのものの衰退を招くだろう。

シャネルは彼らとは違うスタンスに立っているようだ。
この本以降にシャネルがどういう香水を発売したのか、興味が湧いている。